島根有機農業協会ブログ

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食の練習問題 №29

2010年3月10日

Q:有機農業による生産が生態環境の保全、生物多様性などにとって良いということは確かにわかりました。しかし、有機農業で、日本国民は食べていけるのでしょうか?

A:有機農業に対するかつての専門家達の認識は、農薬も化学肥料もなしに一国の食糧を支えられるはずがないというものでした。確かに、慣行農業から有機農業への転換は、技術的にも経済的にも大変です。そのため、有機農業を推進しようとする国々では転換期間の支援が制度化されています。日本においても、先年「有機農業推進法」が施行されましたので、今後、多様な形で推進策、支援策が講じられるはずです。
欧米諸国は近年、有機農業を積極的に推進してきましたが、一国の食料を全て賄なおうとした国はありませんでした。せいぜい、20~30%程度が目標でした。
ところが、かつては日本と同じように食料自給率が40%程度でしかなかった国が、石油枯渇と食糧危機にさらされた時、一国の運命を有機農業に託すことによって、乗り切ったという実例があるのです。それが、カリブ海に浮かぶ島国キューバです。
80年代末のソ連崩壊によって、ソ連との密接な関係の中で成り立っていたキューバ経済は危機に陥ります。外貨不足から食料輸入が半減。ソ連式大型機械による大規模農場生産方式を支える石油や、化学肥料、化学合成農薬など、ソ連に頼っていた物資の輸入が50%~80%も減少したのです。この危機に対して、キューバ政府は、非常事態宣言を発し、小規模有畜複合による有機農業で危機を乗り切ろうとしたのです。農業機械に代え牛耕を復活させたりして農業に取り組みましたが、大規模農業から小規模有機農業への転換はすぐには十分な生産をあげることができませんでした。一時は食糧不足のため国民の平均体重が9㎏も減少したといわれています。
そのような中でも努力を重ね、少しずつ生産が安定していきました。そして、有機農業によって国民の食糧を確保することに成功したのです。
人口が、日本の10分の1程度の国ですが、熱帯という有機農業には条件の悪い中で、多様な工夫を積み重ねることによって危機を乗り越えたのです。近年、キューバの農業が世界的に注目されているのは、このためです。
そして、キューバ政府が有機農業に全面的に踏み切る判断をした根拠に、キューバ国内で石油が無くとも安定して生産を続けていた小規模有畜複合による有機農業の実例があったといわれています。