島根有機農業協会ブログ

ドキュメンタリー映画【種子-みんなのもの? それとも企業の所有物?】報告

2018年8月23日

 
2018年8月22日
 ドキュメンタリー映画【種子-みんなのもの? それとも企業の所有物?】上映会&お話会参加報告(さんぴーの出雲にて)
 
 大切な種子を守る会が主催された上映会に参加しました。この会は、出雲市佐田町の地域おこし協力隊の方を中心開催されました。彼は、佐田町内に残る在来の品種の大豆を残そうと、佐田で大豆の栽培やみそ作りを実践されており、彼の活動紹介がありました。また、豆を使ったカレーの食事会もありました。
 
 この映画は、PARC(NPO法人アジア太平洋資料センター)によって作成され2017年6月に公開されています。エクアドル、ブラジルなどのラテンアメリカで、種子が多国籍企業に独占されようとしており、その現状や種子を守ろうとする農民の姿が描かれています。日本では、2018年4月1日に、米や大豆などの種子の安定的生産及び普及を促進するための法律、主要農作物種子法(通称:種子法)が廃止され、さまざまな懸念が日本でも広がりつつあることも報告されています。
 
※この映画の解説はPARCのWEBページでも閲覧できますので、ぜひご覧ください。
http://www.parc-jp.org/video/sakuhin/semillas.html
 
https://drive.google.com/file/d/1ZSe-NIZyMiYk7jeq21QIp7KhscIeRH1f/view
 
https://drive.google.com/file/d/1UfY1uO5eDGXDF3IO-mQtxPN-Q-7Rf8BQ/view
 
この解説をさらに要約しましたので、以下に掲載いたします。
 
 
☆世界の動き
 UPOV(ユポフ)条約は1961年に成立し、種を開発した企業の権利が持てるよう定められ、当初は農家が種子を保存することが認められていましたが、改訂がすすみ、1991年の改訂では、種の育成者の許可がなければ自家採種ができなくなりました。また、1980年には、アメリカの裁判で遺伝子組み換え生命体に特許が認められ、その種子を自由に使うことができなくなってしまいました。そして自由貿易協定により、ラテンアメリカなどアメリカ国外でもその権利が広げられました。
 このような流れのもと化学企業による種子や農薬の開発が進み、世界の種子市場の7割弱が6つの遺伝子組み換え企業が独占するまでに至りました(2011年)。
ここまでなら、農家は自分の種を使えばよかったのですが、UPOV1991条約の批准とそれに基づく国内法案が迫られ、2009年ころからいわゆる「モンサント法案」が各国で登場します。内容は、市場に出荷する作物を栽培するには登録された種子を使わないといけないというものです。ボンジュラス、コロンビア、グアテマラで法案が成立た一方、メキシコ、チリでは廃案になりました。映画では大規模な反対運動の様子が映し出されていました。
 TPP(環太平洋パートナーシップ協定)でも、このUPOVを批准することが求められるようなので、注視が必要と思われます。
EUでもこのような動きが進み、EU共通カタログ掲載のタネ以外の売買は禁止されており、実際に逮捕事例もあるそうです。
アフリカでも2014年にアフリカ知的財産機関がUPOV1991条約を批准し、このような動きが進んでおり、タネの自由な流通ができなくなってきているようです。
 
☆日本の種子法廃止
 種子法は米、麦、大豆にのみ適用されており、タネが足りなくなることなく安定した価格で提供されること、地域にあった品種が開発されてきたこと、多様な品種が維持されてきたこと、米の種籾は各都道府県などの生産により国内で完全自給できていることなどの成果があります。一方、それ以外の野菜等の種はほぼ多国籍企業に独占されてしまい、9割は国外生産となっており、価格も上昇しています。
 この法律が、国会でわずか5時間の審議で廃止が決定されてしまい、しかも、報道も非常に少ない状態でした。廃止の理由は、「種子法が民間企業の投資意欲を阻害するから」という説明でしたが、実際には廃止されなくてもすでに三井化学の「みつひかり」や住友化学の「つくばSD」などは都道府県の産地銘柄にも指定され、栽培されています。
 
☆日本の種子法廃止にともなう危惧
 種子法が廃止されると、行政が負っていたタネを供給するという責任がなくなるため、安定供給に懸念があります。たとえば米の種籾は農家にわたるまでに3年かかるけれど、それが計画的に行われるか。 採算が合わないため、都道府県で行われていたタネの供給がストップするのではないかなどです。
 それ以外にも、次のようなことが懸念されます。
・規模の小さい品種が切り捨てられる(採算が合わない品種が切り捨てられ、地域に合った多種多様な品種がなくなる)。
・タネの値段が大幅に上昇する(現在でも民間企業の品種は最大10倍の価格となっている。ますます大規模農家しか経営が成り立たなくなる)。
・農業試験場などが規模縮小、技術ある人的資源が多国籍企業に移行する。
・種採り農家が種採りを続けられなくなる(今までは都道府県と契約した農家が手がけていたが、コスト重視で海外生産となり、貴重な技術継承も失われる懸念がある)。
 
☆既存の民間品種の例
・三井化学「みつひかり」
・住友化学「つくばSD」
・日本モンサント「とねのめぐみ」
 
☆農民のタネを守る動き
 ブラジルでは、2003年にクレオール種子条項が定められ、農家が育てたタネは新しい種子法の適用を免除され、自由に保存したり売買したりできるようになりました。シードバンクも作られ、また、政府が伝統的な固定種を買い取り販売する取り組みも行われています。
 国連人権理事会では「小農民と農村で働くその他の人々の権利宣言」が成立しようとしています。そこではタネの権利についても明記されています。また、「多国籍企業を規制する強制力のある国際人権条約」の成立に向けた努力されています。
 インドでは、バンダナ・シバが創設した市民組織が125以上の地域にシードバンクを作る支援をしており、品種は2500種を越えています。フィリピンでも市民組織が在来品種の米などの種を集めて提供する活動をしています。EUでも無償でのタネの交換や寄付は可能なのを活かし、種の交換のネットワークが広がっています。
 
☆アグロエコロジー
 このような流れの中、ラテンアメリカで広まった「アグロエコロジー」の考えは、化学肥料や農薬に頼らず、小規模でお金をかけずに伝統的な種を自家採種し自然に即した栽培の方が生産性が高く、小規模農家で成功しやすい。また、環境への影響も少なく、健康にもよく、持続可能であるというもので、国連でも食糧生産の倍増や気候変動の収束にもつながると報告され、発展途上国を中心に広がっています。またフランスは国がこのような農業を支援する取り組みがなされ、イギリス、アメリカでも支援や研究などの動きが見られます。
 有機農業の考えは主に先進国で発展しましたが、有機農業を国際的に進めるIFOAM(国際有機農業運動連盟)は2015年の「Organic3.0」という報告で、アグロエコロジーの成果を取り入れる方向を示しています。 化学肥料や農薬を使用する農業は、気候や環境という面でも限界があるにも関わらず、タネを独占し化学肥料の使用を進める状況は、時代に逆行しており、むしろアグロエコロジーこそ今進めるべき農業ではないでしょうか。
 
☆感想
 国家間の利益のため、あるいは大企業の利益のために、農家が代々受け継いできた種子を自由に扱うことができなくなってしまうことは、農家の生活においても、環境や生態系、気候変動にも影響を及ぼすほどの問題となる。これをどうにかしようという取り組みが進んでいるが、日本では問題を目の当たりにしていないせいか、既に小規模農家の経営が成り立たなくなっているせいか、高齢化のせいか、むしろ問題意識は低いのではと思いました。また、世界のアグロエコロジーのような取り組みが進む一方、日本ではそういう動きはあまり感じられません。しかし、この問題は農家だけでなく、人々の生活全てに関わってくることであるので、目を背けずまずは知り、伝えることが必要かと思いました。
 中山間地の多い島根県では必然的に農業は小規模となりますが、そこで農業を営んでいくには、環境や健康、生態系を意識した取り組みがより重要であると思います。
 このたびは、種子に関して考えるきっかけを与えていただき、ありがとうございました。