島根有機農業協会ブログ

「しあわせは食卓にある」参加報告

2018年11月 6日

「しあわせは食卓にある」参加報告
 
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 2018年11月4日、ビックハート出雲にて、すこやかな大地プロジェクト主催の映画上映と講演会のイベント「しあわせは食卓にある」が開催され、参加してきました。この日は秋の日曜日ということもあり、さまざまな他の行事と日程が重なってしまっていましたが、関心が多いためか、多くの参加者が来られ、午後の講演では100名以上はおられたと思われます。
 
 午前中は、映画「いただきます~みそしるをつくるこどもたち」と「その後のはなちゃんのみそ汁」の上映。「いただきます」の舞台は福岡県の高取保育園。高取保育園では、玄米とみそ汁、納豆や旬の野菜を中心とした和食の給食が出されており、アトピーで悩まされる子が入園して改善した姿が映し出されていました。
 印象的だった点は、まず、みんなおとなしく給食をいただき、そしてほぼ全員が完食しているという点。完食できる理由を推測するに、まず、玄米や野菜中心でもおいしいのでは? それと、味噌も子どもたち自らが手作りしており、どうやって食べ物ができたのか理解できるので、食べたいと思えるのでは? そして、映画でも映し出されているように、元気に動き回ることで空腹となり、よく食べられる。というようなのかなと考えました。
 一方、みんなでいただきますをする際に、みんなで合わせて100回噛んでから食べ始めたり、みんなそろってリズム体操したり、日常から運動会のように競い合って鉄棒や板越え、竹のぼりなどをしていました。また、卒園前に味噌作りを下級生に伝える発表会のような会では、一人ひとりが文章を覚えて説明していました。こういう姿を見て、けっこう統制が取れているんだなという印象をもちました。遊びや運動、コミュニケーションももっと子どもに任せ、自由にする時間もあってもいいのかなとも思いましたが、これは映画の編集上あまり映っていなかっただけか、園の考えによるものかは分かりません。食や生活を通じて暴れたりギャーギャーと反抗したりせず、自然と決められたことを実行できる子どもに育っているのかも知れません。いずれにしても元気に生き生きとしている姿が映し出されており、近くにこんな保育園があったらなあと思いました。
 なお、神奈川県座間市の麦っこ畑保育園も紹介されており、そこもすばらしいところでした。
 この映画は2018年のしまね映画祭での上映作品となっておりまして、すでに島根県内の各地で上映されておりますが、今後は、11月11日に斐川文化会館で、11月17日は大田市民会館で上映予定となっております。まだご覧でないかた、ぜひ、ご覧ください。
 
 
 午後は、映画いただきます内にも出演されていた内科医で医学博士の奥田昌子先生の講演会「欧米人とはこんなに違った日本人の「体質」~科学的事実が教える正しいがん・生活習慣病予防」でした。以下に講演の要旨をまとめます。
 
☆人種によって内臓のつくりや体質が大きくことなるというお話。
もちろん一人ひとり見ればそれぞれ違うが、おおざっぱに分けると、日本人は歴史上、米を食べる比率が高く、遺伝的に穀物を消化しやすいような消化器官となっている。遺伝プラス日常の食生活のおかげで、欧米人と比較すると動脈硬化になりにくい(脳梗塞や心筋梗塞になりにくい)、腸内環境がきれい、骨が強いといういい特徴がある。また、弱点としては牛乳をうまく消化できない(日本人の9割)、アルコールに弱い、おなかに脂肪がつきやすい。という点がある。つまり、人それぞれ異なるので、なりやすい病気も異なる。その人にあった食生活や医療が必要である。
 脳梗塞や心筋梗塞が少ないというのは、遺伝により善玉コレステロールが高い、また魚を食べる習慣があることも影響している。腸内環境がきれいなのは、食物繊維の摂取量が多いから。
 牛乳が消化できないのは遺伝的に酵素が弱いためで、さらに、牛乳は肉と同じでコレステロール値を上げる要因となり、動脈硬化を強めることにつながるので、ほどほどにしたほうがよい。カルシウムの摂取量はアメリカ人の半分しかないが、骨粗しょう症になる人も半分以下である。これは遺伝によるものであるが、日本人が大豆をよく食べる(アメリカ人の540倍)ことに起因している面もあるようである。大豆から摂取し骨に蓄えられたカルシウムは骨から出ていきにくいらしい。
日本人(東アジア人)はアルコールに弱い。アルコール摂取により、肝臓がん、大腸がん、食道がんなどになりやすくなる。
 
☆内臓脂肪と皮下脂肪のお話。
 内臓脂肪が増えると、見た目だけの問題でなく、肝臓がん、大腸がん、すい臓がん、腎臓がんなどのリスクが高まってしまう。認知症の原因にもなるとのころ。内臓脂肪と比べると、皮下脂肪は悪影響は少ない。日本人に太った人が少ないのは、遺伝的に皮下脂肪よりも内臓脂肪がつきやすい体質のため、太るより先に病気になってしまうということである。では、内臓脂肪はどうしてつくのかというと、脂肪を取りすぎるから。戦後、日本の食文化は大きく変わり、肉の摂取量が増え、それに伴い病気が増えた。油も内臓脂肪を増やす原因となる。
 
☆ではどういう食生活がいいか。
 戦後の食生活の変化で、動物性たんぱく質の摂取量の増加にともない、日本人の脳出血の死者数が減った。これは、長い歴史上、日本人がたんぱく質不足であったのが改善され、血管が丈夫につくられるようになったため。その分、脳梗塞やがんが増えてしまった。肉は内臓脂肪を増やす原因となるが、魚はEPAやDHAといった成分が中性脂肪を減らして内臓脂肪をつきにくくする作用がある。背中の青い魚(サバ、イワシ、サンマなど)に多く含まれている。週、3~4回は魚を食べれば充分だそう。
 肉は牛よりも、豚、豚よりも鶏の方が脂肪が少ない。脂肪の少ない種類を選ぶのもよいのでは。あとは、揚げ物も量を少なくしたり、衣をやめたりすることで、油脂の摂取を減らす。洋菓子は生クリームを多用しているので食べ過ぎないように気をつけるとのこと。果物の成分の果糖は肝臓で脂肪に変わり内臓脂肪を増やす原因となるので、気をつけるとのこと。
 あとは腸内環境をよくするために、玄米やいろんな野菜など食物繊維の多い食品を食べる。ヨーグルトは腸内の菌の量と比べると圧倒的に少なく、また、摂取しても、腸内の菌に負けてしまい2~7日で追い出されてしまうため、あまり効果は期待できないとのこと。
 和食は塩分が多いことがある。塩の摂取が多いのは問題であるが、カリウムを摂取することで血圧が上がるのをおさえることができる。
 
☆よりよい和食
 まとめとして、和食の欠点を補い、よりよい和食を目指してほしいとのことでした。つまり、大豆は引き続き、味噌や納豆などでよく食べること。動物性たんぱく質も脳出血を防ぐために摂った方がよいが、内臓脂肪がつきにくくするため肉よりも断然魚のほうがよい。食物繊維を多くとる。バランスの取れた食生活をするといったことでしょうか。
 詳細は奥田先生の著書でも紹介されております。私も『「日本人の体質」研究でわかった長寿の週間』、『実はこんなに間違っていた! 日本人の健康法』を拝読させていただいておりまして、客観的な研究結果に基づいた分かり易い言葉で説明されており、また「今はここまで分かっていて、ここは分かっていない。」「これは確かだが、これは専門外なので、想像ではあるが、こう思われる。」など常に単なる思いでなく理路整然とした説明のため、講演も著書もとても納得のいく話でとても勉強になりました。

2018年11月6日 F